
ベトナム英語と一口に言っても、話し手の背景によってさまざまなレイヤーがあります。日常生活の中で英語を身につけた人もいれば、教育を通して学んだ人もいます。この記事ではその中でも、レストランやホテルなど、サービスの現場で実際によく使われているベトナム英語について話しています。
目次
誤解なく、早く、確実に
ベトナム英語の大きな特徴は、意味が分かりやすい単語を使い、短い、効率的な表現を好み、回りくどい言い方をしないことです。
ネイティブ:Do you know where the bathroom is?
ベトナム英語:Toilet where ?
「トイレはどこですか?」
ネイティブ:He was against it at first, but he came around.
ベトナム英語:He disagreed at first, but he accepted my idea.
「彼は最初は反対したが、私の考えを受け入れた」
ポイント
ネイティブ:比喩、慣用句、句動詞をよくつかう
ベトナム英語:機能的な動詞をよく使う
仕事現場でも、こういう表現が使われます。
I send file. Please check.
「何をしたか」「何をしてほしいか」が明確です。
他文化・多国籍な環境では、ネイティブのように話す必要はなく、誤解なく、早く、確実に伝わる英語が好まれます。これは東南アジア全体でそうです。中学校・高校までに勉強した内容で、サービス現場だけでなく、職場でもやりとりが可能なので、自信を持って大丈夫です。
完了・不要を一語で伝えるベトナム英語

Already


もちろん、全文で答えた方が丁寧ではありますが、簡単な表現が求められる時は、Already で済ませてしまうのもアリです。
already = すでに・完了
これはベトナム語のrồi に対応します。
例えば、
Tôi đã gửi email rồi.「メールを送りました。」
rồi = すでに・完了
完了を表す時に、文章の一番最後につけます。
ベトナム語で、rồi rồi rồi と言ってる声をよく聞くのではないでしょうか?同じように、Already already と言うと伝わります。
No need
スーパーのレジで

タクシーのお会計で

ジェスチャーしながら、No need といえば結構伝わりやすいです。
ベトナム語だと
không cần. 「必要ありません。」
không : No
cần : Need
そのままなので、ベトナム人が英語でもイメージしやすいはずです。
ちなみに、
ベトナム語でも、英語にそのまま当てはめてジョークにする言葉遊びがあるそうです。
Không sao đâu. 「大丈夫だよ」
-
Không = no
-
sao = star
-
đâu = where
大丈夫だよと言いたい時に、「No star where !」と、あえて言うらしいです。
時制をあまり取り入れない
「昨日私はそこへいきました。」と言いたい時、英語でなんといいますか?
I went there yesterday.
と言いますね。
ベトナム語英語だとこう変わります。
注意ポイント
ベトナム語英語:Yesterday I go there.
ベトナム語:Hôm qua tôi đã đến đó.
ベトナム語では、đã を使って過去を表すので、単語の時制の変化(went)が起きず、go はgo のまま使われることが多いです。
次に少し複雑な例も見てみましょう。
「私が空港に着く頃には、飛行機はもう離陸していました。」はどう表現しますか?
By the time I arrived at the airport, my flight had already taken off.
英語では、過去(arrive)よりも前に起きたことを、過去完了(had taken off)を使って起きた順番を説明します。
一方で、ベトナム語英語は以下のように、過去完了形は使わず、シンプルに過去形を使う傾向があります。
注意ポイント
ベトナム語英語:By the time I arrived, my flight already took off.
ベトナム語:Khi tôi đến sân bay thì chuyến bay đã cất cánh rồi.
already = đã ~ rồi = すでに
という語を入れることで、順番を表すことができます。
なので、時制の表現が使われていなくても、
- 時を表す言葉 yesterday / last week / tomorrow
- 完了を表す already
の言葉に注意して聞いてみましょう。
YES / NO Question への答え方は慎重に
次の質問を考えてみてください。
「午後の会議、参加しないんですよね?」
「参加しません」と言いたい場合、英語ではどう答えるのが正しいでしょうか?
-
No, I’m not joining.
「いいえ、参加しません」 -
Yes, I’m not joining.
「はい、参加しません」
👉 正解は 1 番!
英語では「いいえ、参加しません」= No, I’m not joining.
が正しい答え方になります。
でも、日本語だと、2 番で答えませんか?
英語と日越語の YES / NO の考え方の違い
-
英語:
👉 事実に対して YES / NO を答える -
日本語:
👉 質問の内容(肯定・否定)に対して YES / NO を答える
日本語と同じ感覚で、英語でもYES と答えてしまうと、「なんだ、会議参加するのね!」と誤解が起きてしまうことがあります。
で、ベトナム語も日本語と同じ考え方を持っていて、同じように回答する傾向があるんです。
注意ポイント
Chiều nay bạn không tham gia cuộc họp à?
「今日の会議、参加しないんですよね?」
Ừ, mình không tham gia.
「うん、参加しないよ」
Ừ =「うん」「そう」など同意する意味があります。英語だと、YES みたいな意味になります。
多国籍で他文化のベトナムでの職場ではどうしたらいいでしょうか?
👉YES / NO だけで答えない
Yes と反射的にいってしまうこともあると思いますが、そのあとにI'm not joining のように全文で事実を答らえれるように意識することです。聞き手は全文から読み取ってくれるので、どっちだろうと思ってもう一度確認してくれることもあるので、できるだけ情報を与えるようにしましょう。
👉That’s right / That’s correct を使う
YES/NO ではなくて、相手の言っていることが正しいですよという意味になる答え方にします。そうすればYES/NOで迷ったり誤解がなくなります。これはよく私が使っている方法です。
Sir / Madam が定着している
Sir, Madam と呼ばれる経験をした方は多いのではないでしょうか?ベトナムの日常生活、特にサービスの現場でこのように呼ばれることが多いです。個人的には、欧米での日常生活ではこう呼ばれることはありませんでした。映画の中で、軍隊やお役所などの上下関係が厳しいところでこのように表現を聞くことはありますね。
ベトナム語は「呼び方」が超重要な言語で敬意の表現になります。
-
anh / chị
お兄さん・お姉さん世代 -
cô / chú
親世代 -
ông / bà
おじいさん・おばあさん世代 -
em
年下
ベトナムには、目上の人を敬うアジア特有の文化がとても強くあります。そのため、英語を話す場面でも、必ず敬称をつけたいという気持ちから、Sir/Madamをつけたいのではないでしょうか。
ちなみに、
私のベトナム語の先生はフランス植民地時代から来ていると考えていました。フランス統治下、明確な上下関係があったため、礼儀を示すこととだけでなく生存戦略的に、丁寧すぎるほどの敬称を取り入れたのではないかとのことです。

英語では、Sir / Madam をつける必要はありません。
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呼びかけたい時
Excuse me. -
お礼を言う時
Thank you ! -
名前が分かっている時
Thank you, ○○. ※ 名前で呼ぶことは最も尊敬や親しみを表せます。
まとめ
今回は、ベトナム英語の文法や表現をご紹介しました。ネイティブの英語を目指さなくても、直接的で分かりやすい英語は、ベトナムの現場では十分通じます。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。次回は、ベトナム英語【発音編】です。