学習方法

運動習慣が英語を話す自信を高める?大学院の研究でわかったこと

なぜ運動習慣なのか?

大学院1学期目で、「運動習慣と英語を話す自信」の関係について研究しました。

なぜ、このテーマを選んだのか。

きっかけは、私自身の小さな変化でした。

私は2019年から、ジョギングを習慣にしています。

以前は、朝起きてすぐ走っていた時期もありました。

走ったあとに仕事をすると、不思議と集中できる。

さとみ
朝に走るだけで、こんなに違うんだ

ここ数年は、夕方に走ることが多いです。

週に数回、5kmほど。

走り終わったら、夕飯を食べて、シャワーを浴びて、

さとみ
「疲れた〜」とぐっすり眠ります

私にとってランニングは、単なる運動ではありません。

走っているときは、呼吸に意識を向けます。

「アクティブな瞑想」のような時間です。

その間は、日常の嫌なことをいったん忘れられる。

だから、走ったあとは気持ちがすっきりする。

さとみ
ストレスが軽くなって、少し機嫌がよくなります

こうしたいくつかの変化が重なった結果なのだと思います。

自信がわいてきていることに気がつきました。

それは、走ることだけに対する自信ではありません。

自分がやること全体に、少し自信が持てるようになった感覚です。

英語を話す自信に関係するのだろうか?

そして、もう一つ気づいたこと

特に面白いと思ったのが、走ったあとは、普段よりおしゃべりになることでした。
日本語でも、英語でも。

なんとなく楽しい気分になって、「誰かと話したいな」と思う。
普段なら、そこで話すのをやめてしまう場面でも、もう一歩踏み込んでみる。

さとみ
いつもより少し勢いがついて、普段よりたくさん話せる。

私はもともと、話すことが得意なタイプではありません。

さとみ
運動すると、こんなふうに人と話す自分になれるんだ

もし、この「話してみよう」と思える感覚が、英語を話すときにも働いているとしたら?

英語を話すためには、もちろん英語の知識と練習が必要です。
でも、知識があることと、実際に口から英語が出てくることは、同じではありません。

😳 「間違えたらどうしよう」
😳 「うまく言えなかったら恥ずかしい」

そんな気持ちがあると、知っている英語でも出てこない。
そしてこの部分は、教え方を工夫するだけでは埋まりにくいところです。

「英語の教え方」に加えて、「英語を話す人自身のコンディション」にも目を向けてみたらどうだろう?
と考えるようになりました。

自分の経験から気になったこの可能性を、大学院で小さな研究にしてみることにしました。

研究結果:運動の「頻度と時間」が英語を話す自信の高さと関係する

何をしたか

マレーシアの大学附属英語センターで英語を学んでいる31名に、アンケートに答えてもらいました。
(英語が母語ではなく、大学入学準備のためのクラスや生活で英語を使っている学生さん)

聞いたのは、大きく2つ
・どんな運動習慣があるか
・クラスで英語を話すことに、どのくらい自信があるか

運動を「する・しない」ではなく、

  • 頻度
  • 時間
  • 強度
  • 種目

4つの側面に分けて聞いたところがポイントです。

わかったこと

この4つのうち、「頻度」と「時間」が、英語を話す自信の高さと関係していました。

つまり、定期的に、ある程度まとまった時間、続けて運動している人ほど、英語を話す自信が高い傾向があった、ということです。

一方で、「強度」と「種類」には、大きな関係は見られませんでした。
きつい運動をしているかどうか、何の種目をやっているかは、あまり関係がなかったということです。

さらに、運動習慣の4つの側面をまとめて見たとき、英語を話す自信との間に統計的な関係が確認できました。

ただし、運動習慣で説明できたのは自信の一部分だけです。残りは、性格や、英語の知識や、これまでの経験など、他の要因が関わっているはずです。

今回の研究の限界

今回は31名という小さな調査で、しかもある一時点を切り取ったものですので、一般化できるわけではありません。
また、実験を行ったわけではないので「運動したから自信がついた」という因果関係まで示せたわけではありません。

さとみ
ですが、関連する文献をみると、面白いことが分かりますのでご紹介していきます

自信は「話す」行動につながる段階の一つ

MacIntyre(1998)が提案したモデルでは、人が外国語を実際に口にするまでに、ピラミッドのように6つの層を通過するとされています。

外国語を話す行動に到達するまでに、以下の段階をふむそうです。
層1(頂点):実際に話す
層2:話したいという意欲(WTC)
層3:その場限りの条件
層4:動機づけの傾向
層5:感情と認知
層6(土台):社会・個人的背景

今回の研究で扱ったのは、層4:「動機づけの傾向」に属する7番:「外国語における自信」(持続的な「私は英語が話せる」という全般的な自信)です。

この積み重ねを見ると、

表10番「英語能力」(語彙、文法、流暢さなど純粋な英語力)は土台の一部でしかありません。

  • 表7番「外国語における自信」(持続的な「私は英語が話せる」という全般的な自信)
  • 表4番「その場の自信」(そのトピックに限った自信)
  • 表2番「話したいという意欲」(「今、この場で話してみよう」というスイッチ)

上記の3つは、知識や練習量だけでは説明がつかない、その人のコンディションの部分です。

運動は心理に影響する

ほかにも参考にした文献を紹介します。運動が心理面全般にどう影響するかを調べた研究からです。

参考

運動習慣がある学生は、自己効力感(「自分はできる」という感覚)⇧+学業への取り組み⇧が高かった。
Gao et al. (2025), Frontiers in Psychology

参考

3ヶ月ランニングを続けた学習者は、感情の扱い方が変わった

  1. 表出抑制:感情が湧いたあとに、それを隠す行動
    😀 「緊張しているのに平気なふりをする」などが減り、より自然体でいられるようになったという変化です。
  2. 認知再評価:起きた出来事に対する受け止め方を意識的に変えることで、不安や怒りなどのネガティブな感情を和らげる心理学の手法
    😀 「ミスは起こるもの。そこから学べばいい」と、出来事を捉え直す力が育っていた。

Akram & Oteir (2025), BMC Psychology

心理と英語を話すことの関係

次に、その心理的な変化が、実際に外国語を話すこととどうつながっているのか。ここに踏み込んだ研究を2つ紹介します。

参考

5大性格特性の中で、「情緒安定性」が英語を話すときの自信の高さに最も影響を与えることがわかった。
これは日本人の大学生1,081人を対象にした研究です。
Apple (2011), Temple University 博士論文

参考

身体運動は、粘り強さ+成長マインドセットを通じて→コミュニケーション意欲を高め⇧、最終的に英語での自己認識でのコミュニケーション能力(英語で伝えられるという感覚)につながった。
Qiu et al. (2025), SAGE Open

日常生活で運動の取り入れ方

今回のミニ研究からわかったのは、

ポイント

きつくなくていい。どんな種類でもいい。ある程度まとまった時間、続いていることが大事

通勤中に一駅歩く。エレベーターをやめて階段を使う。電話中は座らずに立って話す。今の生活を大きく変えずに、少しだけ体を動かす時間を増やす。

好きなスポーツやエクササイズがあるなら、それを続けるのが一番です。種類は関係なかった、というのが今回の結果でしたから、「何をやるか」より「続けられるか」で選んでいい。

そして、記録するなら「強度」ではなく「頻度」と「時間」。何キロ歩いたかより、何回やったか、何分やったか。週1回60分より、週4回15分。

まとめて頑張るより、小さく繰り返すほうが、今回のデータには近い形でした。

私のレッスンでは、どんなふうに取り入れられるのか?

💡 英語で取り組む運動グループを作りたい

いつか、英語で取り組める運動グループを作りたいと思っています。国籍の違う人たちと、英語で話しながら軽く体を動かす場所。運動と会話が同時に起きる場は、先ほどのモデルで見た「話しかけやすい相手と、リラックスした状況」にも重なります。まだ構想段階ですが、実現したい形の一つです。

💡 レッスンで、運動の状況を聞く

レッスンは英語を教える場ですが、「話す自信のコンディションづくり」という位置づけで、運動の話題を出すことがあります。今週どのくらい体を動かせたか、軽く聞いてみる。アドバイスというより、雑談に近い形です。それでも、生徒さんが「そういえば最近運動してないな」と気づくきっかけになれば、それで十分だと思っています。

まとめ

運動習慣を取り入れることで、英語を話す自信を高められる可能性があります。

きつい運動でなくていい。特別なスポーツでなくていい。今回のミニ研究が教えてくれたのは、続けていることそのものに意味があるかもしれない、ということでした。

英語の勉強は、これからも必要です。でも、それだけがすべてではありません。体を動かす習慣が、その土台を少しだけ支えてくれるとしたら、英語学習の入り口は、教室の外にもあるのかもしれません。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!今後も言語に関わるさまざまな活動をしていきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

英語レッスン受け付けてます

2026年3月からマレーシアの大学院でTESOL修士を始めました!ですが、引き続き英語レッスンも行っておりますので、英語学習に関するご相談いただけると嬉しいです!

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